【コラム】TPP協定をめぐる情勢と今後の農民組織の対応などについて

1.TPP協定承認案などをめぐるこれまでの国内の動き

TPP(環太平洋経済連携協定)は、本年2月4日に交渉参加12カ国による「署名調印式」が行われ、各国での承認手続きを進めることとなった。
これを受け、わが国においても3月8日にTPP協定発効に向けた「承認案」と「関連法案」について政府が閣議決定し、一括提案となる集中審議が行われる見通しであった。

しかし、国会審議の冒頭より同交渉過程の「情報開示」のあり方をめぐり、政府の対応姿勢の不誠実さに加え、西川 公也・TPP対策委員長の議事運営や同交渉での内幕を記述した著書の出版などをめぐり、TPP特別委員会が空転しており与野党間の対立は激化している。

これらの渦中で、政府与党は熊本大地震の影響などにより想定していた国会の「審議時間」が確保できず、激しく抵抗する野党の反対を押し切り強行採決に踏み切れば、夏の参院選への悪影響が避けられないと判断して、今国会でのTPPの承認案・関連法案の成立を断念した経過にある。

2.道農連及び本連盟のこれまでの対策行動及び今後の対応などについて

本連盟では、2月の定期総会において『国会決議を逸脱したTPP断固反対、批准阻止運動を強化しよう』との総会スローガンのもと、本年度の運動方針を決定している。これを受け、上部組織・北海道農民連盟(略称:道農連)は、TPP批准阻止運動の取り組みを道内外における広範な市民団体などと連携を図りながら強化することを決議した。

TPPバッジこのため、3月24日に札幌市において『TPPから北海道民の命と暮らしを守るためのシンポジウム』を400名(内、北見地区より27名)参加のもとで開催した。さらに、3月30~31日の日程により、『TPP批准阻止対策中央行動』を全道各地区の農民代表47名(内、北見地区より18名参加)で上京し、国会行動(座り込み)や決起集会(請願デモ)の他、農民組織での独自対策として、道内選出国会議員「要請懇談会」を実施し、TPP承認案の反対などを強く要請した。

また、本連盟では、4月14日に北見市民会館において、JA道中央会・北見支所並びに道ぎょれん・北見支店と主催団体として、TPP交渉に係る第10回「拡大研究会」を各自治体首長、関係機関・団体関係者約200名参加のもとで開催した。講師に北海道大学大学院・准教授で農学博士の東山 寛氏を迎え、上記、TPP協定の国内外をめぐる状況や地域経済・生活圏にも影響を及ぼす同協定の詳細について講演を受けた。

また、講演に先立ち、本連盟・佐藤 正光委員長より情勢報告として、『強引なTPP国会承認には断固反対する。黒塗りの交渉記録で何の検証論議ができると言うのか。今後も、政府に誠実な対応を強く求めていく』と会場参加者に報告した。

東山准教授は、講演中に『安倍首相は関税撤廃の例外を確保したと述べたが、TPP協定本文における「除外」などの交渉記述はないことが判明している。これは、【聖域】と呼称していた日本の重要5品目への関税撤廃にも間違いなく踏み込んでいる。政府は、これらの事実を認め、国民に説明責任を果たすべき』と厳しく指摘した。

TPPリーフレット質疑応答では、参加者した農民代表より『TPPの大筋合意以降、これまで4回ほど同様の説明会やシンポジウムなどに参加したが、影響検証が不透明であり、今からでも批准阻止をしていきたいと考える。情報開示は極めて不十分で発効後の影響分析はしっかり行ってもらいたい。TPPはやはり農業者だけの問題に留まらない。今後も、広範な国民各層と理解共有がなくてはならない』などの意見が出された。東山准教授は『あらゆる発信媒体を利用してTPPの本質を訴えていくことが肝要。従って、本日もTPP分析チームの「リーフレット」を持参したが、農連の皆さんが先に配布した様だ。これらも活用して、市民レベルの普及活動にも役立ててもらえると幸いである』と回答した。

同研究会は、オホーツク管内33団体で構成され、本連盟ではTPPの啓発資材の提供として、道農連の新たな「バッジ」及び北大・東山 寛准教授も加盟するTPPテキスト分析チーム作成の「リーフレット」を参加者全員に配布し情報共有などを行った。

これらのことを受け、道農連及び本連盟は、正念場となるTPPの国会批准の断固阻止などを求め、今後も各関係機関・団体などと総力を上げTPP影響試算の再検証と情報開示を粘り強く求めていくことを確認している。